失われた自分を求めて

元公務員/元フリーター/元ニート/アラサー/思いは言葉に

森会長発言を「時代錯誤のオジサン」と批判することへの違和感

お久しぶりです。アラサトです。
コロナになってすっかり社会の様子も変わりましたが、ジェンダーにまつわることは変わってませんねえ。

今日は2月3日の森会長の
「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」
「組織委員会にも、女性は何人いますか、7人くらいおられますが、みんなわきまえておられます」
などの発言とそれに対する一連の反応や批判について、勇気をもって掘り下げてみようと思います。


到底理解できない&まあそうだろうな

発言を聞いたときのぼくの最初の感想はこの二つです。まずは、わけの分からんこと言ってんな。会議の時間とジェンダーバランスは関係ない。そもそも、理事会で話し合うことが仕事でしょ。「わきまえる」もどういう目線で言ってんのか、と。

同時に、ぶっちゃけ、まあ森さんならそんなこと言っちゃうだろうなと。首相の時もおかしなこと言ってたし、直接話したことはないけど、物のとらえ方とか、言葉の使い方とか自分とは違うだろうなと思ってました。そういう意味では今更そこまでの驚きはありませんでした。

さらに言えば、社会の中にも同じように思っている人いるんだろうなとも思いました。経団連の会長も「日本社会にはそういう本音が正直あるような気もしますし、こういうのをわっと取り上げるSNSっていうのは恐ろしいですね。炎上しますから」と笑いながら述べていました。
(その後「女性と男性を分けて考える習性が強いが、日本は色々な意味でマイノリティーへの配慮はまだまだ課題がある」という趣旨だと釈明していましたが)
つまり、「いやいや、森さん、本音でそう思っていても言葉にしちゃマズイですよ」と思っている人はそれなりにいるんじゃないかと思うわけです。

だからこそ、悲しいけれど、「まあそうだろうな」と思ったわけです。


再発防止を求める批判と、時代錯誤のオジサン批判という二つのベクトル

改めてはっきり言いますが、ぼくは今回の発言には全く賛同できません。NOです。組織委員会やJOCの対応が遅いことや、一部の政治家が「謝罪し撤回したんで」と言っているのも違和感をもちます。撤回すりゃいいって話じゃない。問題は、本音を言葉にしてしまったことではない。その本音自体の是非が問われているのだから。

最初は「辞任だな」と思っていましたが、そのうち「うーん辞任して、それで何かよくなるのか」という気もしてきまして。そこで、署名運動をニュースで見ます。「処遇の検討と再発防止を求めます」という表現にはけっこう共感しました。これまでは、こういった時に個人の責任を追及し終わりにする「排除型」の運動が多かった気がします。でも、今回の署名運動には、より広く、組織に対して、社会に対して話し合い行動をしていきましょうという未来を向いた「課題解決型」の動きを感じました。

一方で「こういう時代錯誤のオジサンは日本企業にいっぱいいる」的な記事も目にしました。おっしゃりたいことは分かりますよ。ただ、女性差別をする人=中高年の男性=「時代錯誤のオジサン」というようなレッテル貼りには、森さんの発言と同じくらい違和感を持つわけです。もっと言うと、「時代錯誤のオジサン」という批判は、男性と女性の溝を深めることになってしまう気がします。「女性はこれだから」→「オジサンはだから時代遅れでダメ」→「また女がうるさい」→「男ってホント分かってない」という非生産的ループが見えます。


ではどうしたらよいのか

こういった差別的な発言を批判するときは、ちゃんとNOという。しかし、感情的にならず、レッテル貼りもしない。「あの世代の男性はみんなそう」は差別を再生産するだけで、改善には非生産的。むしろ、発言内容について議論したいですね。森さんはどうしてそのように感じているのか、森さんが生きたのはどのような時代だったのか、市民はどのような違和感・不快感を持っているのか。

そんなの現実的じゃないよと思うかもしれませんが。
でもね、もし仮に中高年の男性に女性に対する偏った見方が多いとして、その男性たちを「時代錯誤のオジサン」呼ばわりして物事がよくなるとは思えないのです。もし自分が言われたら気分も悪いし。

上記の署名運動のような、毅然とNOと表明しつつ、男女関係なく一緒に考えてみましょうよという包摂的な(包み込むような)アプローチを続けていくしかないんだろうなと思いました。なんなら、森会長主催の「森さんとジェンダーを語る会」みたいなサブイベントをオリパラと並行して開催してもらって、アスリートや署名運動参加者と考えをぶつけ合うような時間をつくってもいい。徹底的に対話してもらって、そういうプロセスを社会に見せていくことも一つの責任の取り方ではないかと。

NOと言いつつ、包摂するって難しいですね。
少しモヤっとしますが、今日はここまでで。


 

arasato.hatenablog.com