失われた自分を求めて

元公務員/元フリーター/元ニート/アラサー/思いは言葉に

映画『ブラインドスポッティング』を観て

最近すんごいヒマなので、映画館に行きまくってます。ソロ活動大展開中のアラサトです。

掘り下げたい映画がいくつかあって迷っちゃうのですが、特によかった『ブラインドスポッティング』というアメリカの映画についてお話しします。

blindspotting.jp


内容をスーパー要約すると2点。
・黒人青年コリンは刑務所出所後の保護観察中で、その最後の3日間を無事に乗り切れるかを描いている。
・ブラインドスポッティングとは、訳すと「盲点」で、黒人というだけで「不真面目」「危険」などと見られ、真面目に働いて平穏に生活する(したい)姿は見落とされているという意味合いで使われている。


何といってもすごいなと思ったのは、緊張感です。


アメリカで、黒人として生きることで、感じる緊張感。
何も悪いことをしてないけどたくさん職務質問を受ける緊張感。身近に銃がある緊張感。悪いことをして逃げると警察官に射殺されるかもしれない緊張感。
ぼくは、この緊張感を味わったことがありません。日本で日本人として生活しているとなかなか分からない、この緊張感が映画の端々からものすごく伝わってくるんです。


実際に、刑事司法システムのなかでの人種差別は多く指摘されています。
黒人は白人の約6倍多く職務質問を受けている、アフリカ系の黒人が収容される率は白人の5倍以上である、などなど。最近でも警察官が勘違いで黒人男性を射殺してしまったという事件があったみたいです(詳しくはコチラ)。映画でも、コリンの友だちのマイルズ(感情むき出しの問題児)は、けっこう色々やらかしてるのに、白人だからなのか逮捕されません。


そして、『ブラインドスポッティング』という題名は、そういった緊張感が構造的に強化されていることを示していると思います。
黒人のコリンは、真面目に働いて何事もなく保護観察を終わらせたいと思っている。でも、周りはなかなかそうは見てくれない。そういう小さな出来事が積み重なっているうちに、「どうでもいいや」とか「がんばってもダメなんだ」と「不真面目な黒人の姿」を自分自身で内面化していってしまう。
これは白人の側にも言えます。「黒人の容疑者は何をしでかすか分からない」「重罪犯で危険だ」という見方が刷り込まれていって、ある地域の黒人に対する差別的な扱いにつながってしまう。映画の中でも、黒人を射殺してしまった白人の警察官が自責の念に苛まれているような姿が描かれていました。


こういうちょっと短絡的な、ブラインドスポッティング的な物の見方って、ぼくもついついやってしまうなあと思います。いろんな場面で、いろんな人に対して。
そんな、ジョークあり、イケイケカルチャーもありつつ、どこか知的な雰囲気のある映画でした。星みっつ!★★★


【参考文献】
Eastwood, N., Shiner, M. and Bear, D. (2013). The Numbers in Black and White: Ethnic Disparities in the Policing and Prosecution of Drug Offences in England and Wales. Release Reportno.2. London: LSE Consulting.

National Association for the Advancement of Colored People (NAACP) ウェブサイト