失われた自分を求めて

元公務員/元フリーター/元ニート/アラサー/思いは言葉に

元公務員が斬る!~公文書管理編~

暑い。出たよ。日本の蒸し暑い夏。
かと言って、クーラーを浴びると、これまた調子が悪くなる。
齢は重ねたくないねアラサト(仮)です。


明言はしていませんでしたが、ぼくは元公務員です。○○○省に勤めていました。
今回からシリーズもので、公務員組織の「ん?これおかしくない?」をちょい出ししていこうと思います。
公務員や行政を批判する目的では全くありません。むしろ、メディア報道からはなかなか分からない公務員世界の実態を伝えるためです。特に、公務員組織のシステムの問題についてお話しします。

世の中には、いろんな公務員の人がいて、いろんな公務員組織がありますので、一概にすべて当てはまるものではないことをご承知おきを。


前置きが長くなりましたが、記念すべき第一回目は、
「公文書の管理」
についてです。

いや、分かりますよ。第一回目にしてつまらんトピックだなと。
でも、森友学園の問題で文書改ざんが問題になってけっこう注目もされてると思うんです。でもね、悪意を持って改ざんしたり廃棄したりするケースは、ゼロではないにせよ、そんなに多くないと思っています。実際に起きているのは、「仕組みがよく分からんし、時間もないめんどくさいから、まあ多少適当でもいっか」でずさんな管理が起きていると思います。

で、ほんとにめんどくさいわけ。めんどくささの理由ざっくり三点。
①ルールが複雑
②不便なシステム
③人材不足


①ルールが複雑
法律的なことを知りたい方は、2009年に成立した「公文書等の管理に関する法律」をググって調べてください。内閣府のページにいろいろ書いてあります。

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内閣府のホームページより

ね。なーんじゃこれってかんじでしょ?笑
ほんで、この法律の下に、ま~そりゃま~いっぱい細かいルールがあるんです。
<全省庁共通>
・公文書管理法施行令
・行政文書の管理に関するガイドライン
・一元的な文書管理システムマニュアル
<各省庁>
・○○省行政文書管理規則
・○○省行政文書管理要領
・標準文書保存期間基準

読めない。こんなにいっぱい読めないよ ( '3')


②不便なシステム
それで②につながるのですが、「一元的な文書管理システム(以下、システム)」というのもま~使いにくいわけです。このシステムを使って文書を分類分けして保存期間とか期間満了後の取り扱いとか登録します。ただ、文書の作成とシステム登録は基本的に切り離されてしまっています。

①ワードで文書を作成
②データは共有フォルダに保存
③印刷
④ハンコを押して上司等に決裁を上げる
⑤決裁を受けたものをリングファイルに綴じる

このリングファイルに分類名をつけてシステムに登録しているわけです。システムには分類名だけ登録されて、一つひとつのファイルの元データが残っていない場合もあり、官署内の共有フォルダーにのみデータが残っているという状態が多々存在します。

さらに問題なのは、保存期間とその後の廃棄です。文書の種類によって保存期間を3年とか5年とか決めるのですが、特に根拠はなく「常識」に沿って決めます(国にとって重要な文書については10年とか30年とか決まってます)。その上、保存期間3年の文書を3年経過したからといってすぐには捨てられません。上の図の中段ちょい下にある「廃棄の措置」と「同意」がありますね。廃棄に際しては、
あらかじめ、内閣総理大臣に協議し、その同意を得なければならない」
となっていて、この同意がなかなか下りなかったりするんです。
すると、事務所の書庫内に
「保存期間を満了しているが廃棄同意がなく捨てられない文書」
「廃棄同意の申請を忘れてしまった保存期間を満了した文書」
などが発生するんです。

これが数年積み重なるだけで、書庫はカオスと化します。


③人材不足
それくらいちゃんとやれよ、と思われるかもしれない。
そこで③の人材不足にいくわけです。そりゃね、この複雑な文書管理の仕組みを理解して、文書の整理やシステム登録をやってくれる専従職員がいれば、話は別ですよ。でも、そんな人いないのです。その役所がやらなければいけない通常業務の傍ら、日々の書類整理をしてるんですよ。
ちなみに、アメリカの国立公文書館の職員数は約3,000人、日本は約50人。
その原因についての指摘もある。

日本に置いて公文書の管理を強化するという課題が置き去りにされてきたことの原因の一つは、それが本格的に始まる前に、「小さな政府」を目指す行政改革が実施されてきたことにある。(前田,2018)



とまあ、文書管理について思うところを書いてみました。要はね、文書改ざん以前の問題なんです。システムの欠陥というか構造的な問題だと思っています。本当に行政文書をしっかり管理して事後でもトレースできるようにするには、
・文書の作成から決裁・保存までできる一気通貫のシステム
・専門的な人材の配置・増員
が必要でしょうね。

こんな感じで、時々、ココが変だよ!と叫びたいと思います。


【参考文献】
前田健太郎(2018)「「小さな政府」と公文書管理」,『現代思想』46(10) ,p62-67,青土社

 

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