失われた自分を求めて

元公務員/元フリーター/元ニート/アラサー/思いは言葉に

ゆるふわボランティアとせんだいメディアテーク

11月某日。
午前5時10分。

バスを降りると、冷たい風が身体を突き刺す。
仙台駅周辺のマンガ喫茶をスマホで調べる。
ダウン持ってくればよかった。仙台おそるべし。


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前々から行きたいと思っていたところがあった。
せんだいメディアテーク。
図書館やらギャラリーやらが一緒になった「複合文化施設」。フレデリック・ワイズマンの『ニューヨーク公共図書館』というドキュメンタリーを見て、図書館に興味が湧き、いろいろ調べるうちに知った。

しかし、図書館に行くためだけに1万円を超える交通費はいただけない。
うーむ・・・

ピカーン ( ̄∇ ̄)
災害ボランティアで行けば交通費割引になるかも!
宮城県丸森町に行くことにした。


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漫喫で仮眠を取り午前8時。仙台駅発のシャトルバスに乗り、丸森町ボランティアセンターへ。夜行バス(片道5700円)で来たからか眠い。
ボランティアセンターはごった返している。1時間ほど待った後、11時頃に現場に到着し泥かき作業開始。目が覚めてくる。
大勢でやったからか14時ごろには作業が終わる。腰が痛い。

16時発のバスでボランティアセンターから丸森駅へ。
丸森駅から槻木駅に行きたい。が、台風の影響で阿武隈線が不通なので、16時30分発の代替バスに乗る。17時30分に槻木駅に到着。もうあたりは真っ暗。

槻木駅まで今夜泊まる宿のシマザキさんに迎えに来てもらった。

柚子のあぜ道 雨乞のかえる

しゃれた宿の名前。
普段は、1泊35,000円で古民家を一棟貸ししているという。
それが今回は無料。災害ボランティアは無料でいいという太っ腹で粋な計らい。
調子に乗って最寄り駅までの迎えも頼む厚かましいぼく。

雰囲気抜群の古民家に到着。
囲炉裏がある。赤く色づいた炭がじんわりと暖かい。
快適なお風呂。台所を使ってもいいと言われたのでがっつりカレーをつくる。
囲炉裏でカレーを頬張る。夜行バスからの疲れがじわじわと癒されていく。

待っていると二人のボランティアがやって来る。
シマザキさんは帰ってしまったので、代わりにぼくが古民家の中を案内する。
IT企業にお勤めのITさん、理学療法士のPTさん。
囲炉裏でひととおり世間話をして、23時には眠りについた。
       
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2日目。パリッとした空気が心地よい。
PTさんの車に乗せてもらい一緒に丸森町のボランティアセンターへ。
7人のチームで山の中のお宅に乗り込む。

浸水被害ではなく土砂被害のお宅。
土砂で1階が流され、床下などいたるところに泥が入り込んでいる。
山水を含む重たい泥をひたすらかき出す。泥との戦いであり、腰との戦いでもある。

15時作業終了。
PTさんと買い出しをして古民家に戻る。
ミネストローネ鍋なるものをつくる。ほぼトマト鍋。

そうこうするうちに、古民家に新たに客が来る。男性の看護師さん。
ITさんも戻り、男4人でミネストローネ鍋を囲む。
被害の話、ボランティアの話、仕事の話など話が弾む。
話すうちに、ふわあっと気持ちよく眠くなっていく。幸せな瞬間。


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3日目。
丸森町の隣の角田市のボランティアセンターに行ってみる。
まだまだニーズがある人は多いが、遠慮してなかなかボランティアを頼めないという地域事情があるらしい。

午前中で終了となり、急遽、午後の時間ができる。
宿周辺の雨乞(あまご)地区に、雨乞のイチョウと雨乞の柚子があるというので、PTさんの運転で行ってみることにする。
ちなみに、滞在中の移動は完全にPTさん頼みである。ITさんからはヒッチハイク型ボランティアと揶揄された。おっしゃる通り。

里山をぐるぐる巡るうちに、雨乞のイチョウに辿り着く。

「どっからきた~~?」

三角巾をかぶったおばちゃんが叫んでいる。

「東京から!ボランティアで!!」

叫び返す。

「食の銀杏館」と書いてある。
柚子の加工場兼直売所で、ちょうど加工しているらしい。
たしかに、柚子のいい香りが漂っている。

加工場の中に入れてもらう。
「いいとこにきたなあ」と言われつつ、柚子皮の入った漬物とゆず茶をいただく。
すっかりお茶モード。

なんでも、雨乞のイチョウは、三角巾おばちゃんの私有地にあるのだとか。みんな勝手に入ってきて車止めちゃうから話しかけるようにしてるとのこと。
遠慮したが、おもてなしの凄まじい勢いに負け、猪肉だの漬物だのいただく。柚子胡椒400円を買う。この柚子胡椒は柚子多め唐辛子抑え目なので、とてもおいしい。

古民家に戻り、あごだし鍋と猪肉の味噌焼きをつくる。
ボランティアから戻ったITさんも交え、今日は三人で鍋を囲む。
古民家の木の匂い。囲炉裏の暖かさ。ほどよく疲れた身体がほぐれていく。


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最終日。
風が強い。冬の始まりを感じさせる寒さ。
宿のシマザキさんに感謝を伝え、旅の友たちに別れを告げる。

槻木駅から東北本線で仙台駅へ向かう。風が強くて、ノロノロと徐行運転をしている。ゆっくり少しずつ進んでいる。

ようやく、せんだいメディアテークに辿り着く。
荷物をロッカーに預け、最上階の7階から1階ずつ下りていく。

とても面白い。
館長の鷲田清一が「対話の可能性」という言葉で来館者に語りかけてくる。
「考えるテーブル」という空間がある。黒板には哲学カフェのメモが残っている。「寛容とは何か」みんなで話したようだ。
市民が企画提案して運営されている「メディアスタディーズ」にも面白そうなプロジェクトがちらほらある。

5階は美術展、3階と4階は図書館。自習スペースでちゃっかりスマホを充電。1階には売店とカフェもある。

ぼーっと考え事をしたい時にでもまた来たい。

帰りは新幹線で仙台から東京へ。JRの割引を利用して半額の5,280円。券売機の「オトクなきっぷ」から買える。


寒いときに寒いところに行くのはやっぱりいいなあ
なんて思いながら、景色が見えないくらいの速さで東京に帰る。



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